2024年2月21日水曜日

調査:データセンターが直面する、エネルギーの使用と人材不足という課題

Uptime Instituteによる最新の調査では、データセンター事業者にとって最も差し迫った管理に関する問題は、エネルギー消費を減らし恒常的なIT人材不足に対処することであることが明らかになりました。

安定した運用を行うことへのプレッシャーが高まる中、調査対象者の33%が設備のエネルギー効率の改善について、30%がIT機器のエネルギー効率の改善について懸念していると回答しました。

2023年7月に公開された「Uptime Institute Global Data Center Survey 2023」によると、要件を満たすIT人材を採用して定着させることも優先的課題です。30%が人材不足を非常に懸念しており、27%が将来の容量要件の予測が困難であると回答しています。

Uptime Instituteの調査部門エグゼクティブディレクターであるAndy Lawrence氏は次のように述べています。「2023年には、長く続いた新型コロナ感染症の影響は弱まりましたが、今度は別の課題が現れました。デジタルインフラストラクチャの管理者は、エネルギー効率の向上と人材不足への対処に最も関心を寄せています。その一方で、データセンターのサステナビリティと可視性の向上を目指した政府の法規制を意識し、それに対して投資、対応することが求められつつあります」

850以上のデータセンターのオーナー、事業者、および700近くのベンダー、コンサルタントを対象に行った調査のレポートでは、ますます多くの組織がハイブリッドクラウドを採用し、ワークロードをパブリッククラウドに移行しているということを報じています。   

調査の結果について、詳しく見てみましょう。

エネルギー効率はフラットのまま

レポートによると、世界のデータセンターの電力使用効率(PUE)の平均は2023年には1.58でした。これは、前年の平均1.55に比べるとわずかに悪化しています。

全体的には、平均PUEは2018年以来1.58と同じ水準に留まっています。本レポートでは、2007年から2014年の間に最も電力使用効率が向上したとしています。2007年には2.5であった平均PUEは、2014年には1.65に低下しています。

新たに設立されたデータセンターではPUEは1.3以下であり、2023年には調査対象の16%がPUEを1.3以下に抑えられていると回答しています。

しかしながら、調査によると、古いデータセンターはすでにエアフロー管理の改善、環境抑制の最適化、老朽化した電気系統のアップグレードといったエネルギー効率向上のための簡単な改善はすでに実施済みのため、これ以上のPUEの改善は見込まれないとしています。

さらにPUEの値を下げるには、多額の投資をして既存のデータセンターを改修するか、データセンターを閉鎖して新たに建設する必要があるでしょう。

レポートの著者はこのように述べています。「シリコンチップのための熱設計電力の増大と高性能ITシステムへのトレンドにより、データセンターはその設計に大きな改修を行うことを余儀なくされるでしょう。今後、施設はより高密度であることが要求され、おそらく空気冷却システムと液体冷却システムの組み合わせを採用することになるでしょう。」   

LegrandのインテリジェントPDUは、データセンター事業者に高度な電力品質モニタリングと計測情報を提供します。これらは、PUEを改善してサステナビリティへの取り組みを強化するのに欠かせません。

例えば、新開発のラリタンPX4ラックPDUなら、キャビネットレベルで電力品質と機器の正常性に関する正確な判断材料とアラートがリアルタイムで得られます。ピーク値、最小/最大値の電力測定値に関するリアルタイムの可視性により、データセンター事業者は余剰容量を特定し、電力をより効率的かつサステナブルに使用することが可能になります。

サステナビリティ計測情報

データセンター事業者は、電力使用を抑制する方法を模索しています。なぜなら、顧客や政府規制当局から二酸化炭素排出量の報告することを求める圧力が強まっているためです。

例えば、欧州連合(EU)では、エネルギー効率指令(EED)を再設定し、データセンターにエネルギー使用に関して報告することを要求しています。米国の各州も、同様の報告義務の導入を検討しています。また、証券取引委員会は、気候変動開示ルールを導入し、公開会社に温室効果ガスの排出量開示を義務付けることを検討しています。

Uptime Instituteの調査では、多くのデータセンターが新たな報告要件への対応に苦心することになり、今後数年間はこの領域への投資が不可欠になる、と明らかにしています。

例えば、2023年は88%がITまたはデータセンターの電力消費を、71%がPUEを報告しています。しかし、サーバーの使用率(40%)と水の使用量(41%)を測定しているデータセンターは、半数未満にとどまっています。

二酸化炭素の排出量を調査する企業はそれらよりもさらに少数です。スコープ1の排出量(組織の管理下・保有にあるソースから直接排出される温室効果ガス)を測定しているのはたった28%です。19%はスコープ2の排出量(電気、スチーム、熱、冷却の購入に関連した間接的な温室効果ガス排出量)を調査しています。

さらに、14%がスコープ3の排出(組織の管理下・保有でない活動からの排出量)を、34%が再生可能エネルギーの消費を調査しています。

IT人材に関する懸念  

データセンター事業者は、10年前から変わらず、依然としてIT人材の獲得と維持に悩んでいます。しかし2023年、人材獲得と維持の取り組みは少し改善されました。

今年、データセンター事業者のうち50%が、求人に対し、要件を満たす人材を見つけるのに苦労していると回答しました。これは昨年より3%の改善となります。しかし、2018年の調査では、採用活動に苦心していると回答したのは38%であったことを考えると、いまだに高い割合だといえます。

人材の定着率に関しては、今年は35%が人材の流出防止に苦労していると回答しました。これは昨年より7%改善していますが、2018年に同じような回答をした割合は17%であったことをふまえると、倍以上の割合です。   

人材不足が最も深刻なのは運用部門で、78%が人材不足に陥っているという調査結果が出ています。続いて人材不足に悩まされているのは、機械設備部門の人材(28%)で、その次が電気部門の人材(25%)という結果です。

タレントプールを改善するためにデータセンター事業者に求められるのは、他の分野からのキャリアチェンジが可能で、適切なスキルを持つ人材を発掘することです。また、トレーニングやメンタープログラムを導入し、ダイバーシティ(多様性)、エクイティ(公平性)、インクルージョン(包括性)を促進する取り組みに投資をする必要があると、報告書は述べています。なお、2023年、データセンターで働く人員のうち、女性が占める割合はたったの9%です。

クラウド、AI、サーバーが生み出した新たなトレンド  

また、調査では次のことも明らかになりました。  

  • コーポレートデータセンターにおけるワークロードの割合は、初めて50%を割りました。これは組織がハイブリッドのクラウドアプローチを進めていることの影響だといえます。2023年、ワークロードの48%がコーポレートデータセンターでホストされています。これは2020年より10%の減少です。
  • 組織がサーバーを更新する期間は、2015年は平均45か月だったのに対し、2023年は52か月となり、更新サイクルが以前よりも長くなっています。実際のところ、56%の組織が5年またはそれ以上の間隔でサーバーを更新しています。2015年の34%からの増加となっています。  
  • 回答者の73%が、AIベースのソフトウェアツールの普及により、将来的にはデータセンター運用に必要な人材レベルは低減すると考えています。しかし、まだAIを信用できないと回答する割合が増えていることを考えると、それは先の話です。現在、運用上の決断をAIに任すことができないと回答したのは76%で、昨年よりも12%上昇しています。

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